新たな敵現る!?

犬夜叉より            
                
                     
   新たな敵現る!?

神久朝「神久夜が消滅した・・・か。」
朝日に照らし出された綺麗な女・・・神久朝(かぐさ)が呟く。
神「神久夜が消え、永遠なる夜が滅した今・・・我が永遠なる朝を支配する時が来た。さぁ、我に力を貸す者どもよ。ついて来るのだ!」

―――此れから起こる恐ろしい出来事に気づく者は誰一人として居なかった―――

ピーチクピーチク
犬夜叉「あ~?また国に帰るだぁ~?てめーまだそんな事言ってやがんのかよ!」
木々の間に半妖の少年-犬夜叉-の声が響き渡る。
かごめ「ねっ。お願い!!三日間だけ!!」
手を合わせて犬夜叉に願を掛けている少女-かごめ-。
犬「駄目だ!!」
か「此れだけ頼んでも・・・?」
かごめの肩がふるふる震えだす。
犬「へんっ。やなこった!」
かごめの肩の震えに気づかず、ぷいっと横を向く。
弥勒「犬夜叉、かごめ様を行かせてやりなさい。」
傍に居た不良法師-弥勒-が犬夜叉に小声で話し掛ける。
犬「弥勒っ!おめーまでそんな事言うかっっ!!」
弥勒「私はお前の為を考えて言っているのですよ。」
犬「はぁ~?俺の為だぁ~?ふざけんなっっ!!」
怒鳴り散らす犬夜叉を呆然として見る弥勒と退治屋-珊瑚-と子狐妖怪-七宝-。
珊瑚「・・・あんた・・・気づいてないの・・・?」
犬「何がだよ?」
弥・珊・七宝「はぁ~・・・。」
皆は呆れて溜息をつく。
か「犬夜叉・・・」
犬「へんっ。やっと観念しやがったか。」
か「おすわりっっ!!」
犬「っ!?ぐぇっ!」
シュゥ・・・
騒々しかった林が一気に静まり返る。
七「だから言ったんじゃ・・・。」
犬「ぅ・・・るせ・・・」
か「何と言われようと帰るからっっ!!じゃあねっっ!!」
犬「ぁ、こら。待ちゃーがれぇ・・・」
地面に潰れた犬夜叉は最後の力を振り絞ってかごめを止めようとしたが・・・
か「ふんっ。」
この一言で犬夜叉の意見は削除された。
ザッザッ
かごめは草原をかきわけながら井戸へと向かう。
珊「行ってらっしゃ~い、かごめちゃ~ん。」
弥「行ってらっしゃいませ。かごめ様。」
七「かごめ、直ぐ帰って来るんじゃぞぉ~。」
珊瑚と弥勒と七宝は犬夜叉をアホらしそうに横目で見ながらかごめに手を振る。
犬「ぁ?何だよ其の目は!文句有んのかコラ!!」
珊「別に・・・」
タッ
かごめが井戸の淵に乗る。
か「じゃ、行って来るね。珊瑚ちゃん、弥勒様、七宝ちゃん。」
フッ
そしてかごめは自分の国――現代――へと消え去ったのであった。

神「さて・・・先ずは如何するかな・・・。」
同時刻。
神久朝は悩んで居た。
神「先に動物どもを支配するか?いや、妖怪どもにするか?いやいや、人間どもにするか・・・」
其の時、背後から不気味な声が聞こえて来た。
奈落「では神久夜を殺した者を殺すと云うのは如何でしょう?」
神「誰だ、貴様は。」
後ろを振り返らずに疑問をぶつける神久朝。
奈「奈落・・・と申します。」
神「奈落と申すか。して、貴様はこの我に仇討ちでもせよと言いたいのか?」
奈「いえいえ、そうでは御座いません。」
神「なら如何云う訳だ?」
奈「神久夜を殺した者はどれ程の力を持って居たのかを試す・・・私はそういう事を言っているのです。」
神「神久夜を殺した者を殺して我に何の得が有る?」
奈「幾等気に食わんとて姉の力、貴女様がよく御存知でしょう?」
神久朝の眉がぴくっと動いた。
神「・・・。其れと我の願い――永遠なる朝を支配する事――と何の関係が有ると言うのだ?」
奈「そ奴を殺せれば貴女様は神久夜を越えられる・・・想像を絶する御力を手に入れられる。」
神「・・・。」
奈「そう成れば貴女様の願いを邪魔する者も居なくなると云う訳です。」
神久朝の眉が元に戻る。
そして微笑した。
神「ふっ。貴様の思惑に乗りたくは無いが・・・良い考えだ。仕方有るまい。今度ばかりは貴様を頼ってやる。で、神久夜を殺した者の名は何と言うのだ?」
奈「は・・・?」
神「我に其の者を殺させようと心理を擽る作戦を考える様な奴だ。ちゃんと其の者の名も調べて居るで有ろう。」
奈「・・・よく御分かりで。流石は神久朝様です。其の者の名は・・・」

   ―――犬夜叉・・・―――

犬「ちっきしょー。かごめの野郎・・・もうぜってー迎えになんか行かねーからな!!」
自分が狙われた事も知らず、一人怒って井戸の前を行ったり来たりしている犬夜叉。
犬「・・・かごめの野郎・・・今何してんだろ・・・。」
ぼんやりと井戸の中を見つめながら、ぐた~とへたり込む。
と其の時・・・
神「貴様が犬夜叉か。」
背後から女の声が聞こえて来た。
犬「誰だ!?」
ぴくっと耳を震わせてはっと後ろを振り返る。
神「我が名は神久朝。貴様に滅された神久夜の妹だ。」
犬「なっ!?神久夜の妹だと!?」
神「・・・。」
犬「で、其の神久朝が俺に何の用だってんだ?」
神久朝を睨み付けながら犬夜叉が訪ねる。
神「犬夜叉・・・貴様を殺しに来た。」
犬「へっ。殺された神久夜の仇ってか?」
神「ふざけるな。何故我が神久夜なんぞの仇を打たれば為らぬのだ。」
犬「え・・・?」
神「不思議そうな面をしているな。まぁ訳も分からぬはないが。」
犬「っ!?てめぇ・・もしかすると・・・」
神「言うな!!・・・貴様も半妖で在ろう。我は半妖等と云う忌まわしき生き物は大嫌いなのだ。」
神久朝の気迫に圧倒され、一瞬辺りが静まり返る。
風がざわめき、空気が凍り付く。
そして犬夜叉が凍る様な声で呟く。
犬「忌まわしい・・・だと?」
神「・・・。」
神久朝に悪寒が走る。
犬「半妖だってなぁ・・・必要とされる時が在るんだよ・・・」
神「・・・ふん、負け犬めが。」
犬「てめぇなんかに負ける・・・」
神「半妖は半妖。本物の妖怪には成り得ぬ。」
犬「俺じゃねぇー!!!!!」
思いっ切りそう叫び、鉄砕牙を抜く。
犬「でやーっ!!」
神久朝に向かって疾風の様に振り下ろす。
神「ふっ。」
口元に薄笑いを浮かべたかと思うと、神久朝が一瞬光り輝き、気が付いた時には鉄砕牙が押し戻されていた。
犬「(心:な、何があったんだ・・・?)」
呆気に取られて居る犬夜叉。
神「・・・。」
其の犬夜叉の顔を見て楽しそうに笑みを浮かべる神久朝。
犬「くっ。もう一度!!」
やっと気を取り戻し、鉄砕牙を構え直す。
犬「くたばりやがれ!!」
そしてもう一度刀を振りかぶる。
神「無駄だと言うのが分からぬか。」
犬「(心:どうなったんだ・・・?神久朝の野郎が光り輝いたかと思うと鉄砕牙が押し戻されて・・・)」
神「所詮貴様は半妖。其の程度の力よの。」
犬「うるせぇ!!」
神「もう悪足掻きは止せ。無駄だと言うて居ろうが。」
犬「けっ!今まで手加減してやってたんでぃ!おめーが下す半妖の力、思い知りな!」
神「今まで手加減していただと?なら貴様の本当の力、出してみるが良い。」
犬「言われなくとも、いくぜぇ!!風の・・・」
鉄砕牙を風の傷が取り巻く。一瞬風が止み、森がざわめき、そして犬夜叉が・・・鉄砕牙を振りかぶる!!
神「やれるものならやってみろ。」
犬「傷―――っっっ!!!!!」
懇親の力を込めて、思い切り振り切った。
ゴゴ―――ッッ
神「ふっ。馬鹿め。そんな攻撃・・・」
風の傷の軌道が確実に神久朝の心臓に向かう。
だが、神久朝は余裕の笑みで鏡を懐から取り出し、跳ね返そうと構えた。
ゴゴ―――ッッ
そして、風の傷を余裕ではねかえした。
神「我の鏡の力には敵わぬと言うものを・・・」
煙で神久朝の視界が曇る。
其の時―――
犬「馬鹿はてめぇだ!!まだ勝負は着いてねぇ!!」
神「っ!?」
煙の中からザッと飛び出す。
犬「これが俺の・・・」
神「くっ・・・」
犬「力だぁぁぁぁぁー!!」
大声でそう叫び、神久朝の真上から鉄砕牙を振り下ろした。
鉄砕牙は電光石火の速さで真っ直ぐ神久朝の頭上に降り、犬夜叉が「確実に仕留めた!!」と確信した瞬間―――
辺り一面が光り輝いた。
犬「なっ!?」
其処に一瞬・・・ほんの一瞬だったが、確かに奈落の姿が見えた。
犬「っ!?奈落っ!?」
驚きの声を上げた犬夜叉。まさか・・・まさか奈落と神久朝が連んで居たとは思わなかったのだ。
犬「まっ、待ちやがっ、ぅぐわっ!?」
一瞬心臓の鼓動が止まったものの、なんとか意識を取り戻し奈落を追おうとするが、其の時にはもう全て消えて居り、犬夜叉が地面に激突したのは言う間でも無い。
犬「・・・。」

神「奈落!出て来い!」
此処は洞窟。神久朝は凄い剣幕で叫んでいる。
奈「は・・・。何か用で御座いましょうか・・・。」
奥深くから狒狒の皮を被った妖怪・奈落がひっそりと出て来た。
神「貴様、よくも騙したな!犬夜叉と云う奴・・・手強いではないか!!」
奈「騙した訳では有りませんが・・・。・・・殺せなかったので?」
奈落は少し不愉快そうに訪ねる。だが、神久朝は奈落の質問には無視し、叫び続ける。
神「奴の刀っ、相当な力ではないか!」
奈「鉄砕牙・・・ですか。なら跳ね返せば良いではありませんか。貴女様の鏡も其れ位出来るのでしょう?」
神「っ・・・我の鏡は神久夜の鏡と違って・・・打撃攻撃を其れ程返せはしないのだ。」
奈「左様ですか。」
二人の間に暫し沈黙が訪れる。其の間を破ったのは奈落だった。
奈「此れをお使いに為ってみてはどうでしょう?」
そう言い、キラキラ光る欠片を懐から取り出した。
神「四魂の欠片・・・か。」
奈「よくご存じで。」
神「ふっ・・・。」
神久朝は、口元に笑いを浮かべながらそっと欠片を受け取り、そして、鏡の中に埋め込んだ。
神「さて・・・犬夜叉を亡き者にしに行くか・・・。」
奈「お待ち下さい。」
神「・・・何だ?」
奈「1つ・・・良い見せ物を披露してはどうでしょう?」
神「・・・貴様に任せる。」
奈「は・・・。」
そしてすっと消える奈落。
神「半妖・・・今行くぞ。」

犬「けっ。あの神久朝って野郎、たいして強くなかったじゃねぇか。」
犬夜叉は井戸の近くの原っぱにごろんと横たわって空を眺めている。
犬「・・・楓ばばあんとこへ戻るか・・・。」
すくっと立ち上がり、村の方を向く犬夜叉。
そしてそのまま走り去って行ってしまった。
奈落の魔の手が近づいている事も知らず・・・。

―――3日後―――

か「ふぅ。やーっと帰ってこれた・・・。にしてもテスト散々だったなぁ。」
かごめははぁ~っと溜息を吐きながら井戸からひょこっと飛び出た。
とその時―――
奈「くくく・・・かごめ。久しぶりだな・・・。」
一瞬かごめの視界が曇り、その中から狒々の毛皮を纏った奈落の姿が見えた。
か「な・・・奈落!?」
奈「くくく・・・そんなに怯えんでも良かろう。わしはただ貴様の・・・」
か「うっ!?」
そう発したあと、かごめはばたりとその場に倒れてしまった。
奈「魂を奪いに来たのだ・・・。」
そう。奈落は素早くかごめの身体にある気絶のツボを押したのだ。
奈「くくく・・・楽しくなってきた・・・。」
口元に薄笑いを浮かべ、黒く汚れた四魂の欠片をかごめの額に仕込んだ。
そして奈落は煙に包まれ、消え去ったのであった。

ぴくっ
犬「この臭い・・・奈落のっ!?」
七「え?」
弥「確かに・・・。これ程の邪気を纏っている輩は奈落しか居ませんな。」
犬「森の方向から・・・っ!?」
珊「今日はかごめちゃんが帰って来る日・・・かごめちゃんが危ない!!」
七「そ、そうじゃぁっ!」
珊「急ぐよっ。雲母!」
雲「ガウッ!」
雲母は変化。その上に珊瑚と弥勒が乗り、犬夜叉の背に七宝が乗り、村へ向かった。

犬「かごめっ!」
か「う・・・。」
井戸へ着いた犬夜叉の目には、かごめが倒れている姿が映っていた。
犬「かごめっ!大丈夫か!?」
か「ぅ、うん・・・。」
珊「許せない・・・!奈落の奴・・・。」
か「ま、待って、珊瑚ちゃん。別に奈落は私に危害を加えたわけでもないんだし・・・。」
犬「じゃあ何で倒れてたんだよ?」
か「勉強に集中してたから疲れただけよ・・・。」
そう言い、くらくらしながら立ち上がった。
弥「それにしても・・・さっきから漂っている此の邪気・・・」
珊「そうだね。さっきから私も感じてたんだ。」
七「も、もしかしてまだ奈落が居るのか!?」
弥「有りそうな話ですね。あいつは人が孤独や絶望感を感じている姿を見るのが一番好きなんですから。」
一瞬辺りが静かになり、ざざーっという風の音がはっきりと聞こえた。
犬「そいつは違うな。今此処で奈落の臭いはしねぇ・・・。」
鼻をくんくん言わせながら周りの臭いを嗅ぐ犬夜叉だが、どうやら妖気は感じとれなかったようだ。
か「ねぇ、もう良いじゃない。楓お婆ちゃんの所へ帰ろう?」
弥「そうしますか。」
珊「って法師様!?」
弥「仕方無いでしょう。私達で邪気は感じとれても、犬夜叉は妖気も奈落の臭いすら臭わないんですから。」
犬「何かしたくてもできねぇしな。」
珊「じゃ、帰ろうか。」
流石の珊瑚も納得した様子で、一行は楓の家へと向かった。

―――次の日―――

楓「おや?もう行くのかい?」
弥「はい。そろそろ私達も出発せなばなりませんから。」
七「楓婆、有り難うのぅ。」
犬「おい、もう良いだろ。行くぞっ。」
七「じゃぁまたのぅー!」
かごめの自転車の籠に乗り、大きく手を振る七宝の可愛らしい姿。
段々薄らいでゆき、とうとう其の姿は見えなくなった。
楓「頑張るんじゃぞ・・・。」

犬「ふぁーぁ・・・。まーた道草くっちまったぜ。」
頭に手を回し、大きな欠伸をかく犬夜叉。
さっきの七宝の姿とは似ても似つかない。
か「もー。そんな事言わないのっ。偶には私だって休憩が欲しいんだし。」
犬「偶にはっておめぇの場合いっつもじゃねぇか。・・・っ!?」
慌てて口を押さえるが時既に遅し。
かごめは背にゴーゴー炎を燃やしながらこう一言だけ言った。
か「おすわり。」
ぐしゃ
犬「・・・。」
其の一言で消滅した。
七「だらしないのぅ。」
ぼそっと呟く七宝の頭に、犬夜叉はすかさずパンチをいれた。
ばきっ・・・
七「うわーんうわーん。」
か「犬夜叉、おすわり。」
・・・犬夜叉の不幸はまだまだ続いた。

神「ふっ。暢気にしていられるのも今のうちだ。奈落はかごめに仕掛けをしたと言うて居ったな・・・。あの小娘・・・使える!」
にやりと薄気味悪い笑みを浮かべ、1人作戦を練る神久朝であった。

ぴくっ
犬「ん?この臭い・・・神久朝っ!?」
嗅ぎ憶えのある臭いに気付き、ばっと構える犬夜叉。
か「神久朝?誰それ?」
犬「神久夜の妹だ。かごめの居ねぇ間に俺に襲ってきやがったんだ。ま、当然返り討ちにしてやったんだけどな。」
ふふんと鼻を鳴らし、自慢げに胸まで張っている。
弥「ほぅ・・・。私達の居らぬ間にその様な事が。」
か「って弥勒様も居なかったの?」
弥「はい。」
にっこり笑い、かごめの手をぎゅぅぅぅと握りしめる。
どかっ
弥「・・・。」
珊「そんな悠長な事言ってる場合じゃないんじゃないの?」
弥勒の後頭部には飛来骨の跡がくっきりと残っていましたとさ♪
犬「けっ。神久朝はなぁ、すんげぇ雑魚妖怪だぜ。ほんとに神久夜の妹かぁ~?って思うぐらいのな。」
珊「へ?そ、そうなの?」
犬「嗚呼。だから俺らが束になってかからなくとも簡単に勝てる相手だってわけだ。」
弥「そうなんですか。なら犬夜叉に任せますよ。」
犬「え゛。」
珊「そういう事なら頼むね、犬夜叉。」
七「おら達は今夜の宿を探してくるからのぉ。」
か「気をつけてね、犬夜叉。」
硬直してる犬夜叉を残して、皆はすたすたと歩いて行った。
ひゅぅぅぅぅぅ
犬「虚しい・・・。」
と其の時っ!!
神「犬夜叉よ・・・久しぶりだな。」
闇の中から突然真っ黒な煙を放ち、姿を現した影・・・そう、神久朝だ。
犬「神久朝!へっ。やっぱりてめぇだったか。」
神「ふん。流石は犬の妖怪だな。おっと、すまない。犬の妖怪ではなく、犬と人間の紛い物だったな。」
プチッ
犬「てんめぇ・・・今すぐその減らず口黙らせてやらぁ!!」
しゅっと鉄砕牙を抜き、構える。
神「やれるものならやってみろ。」
犬「この前も其の言葉言ってたよな?其の言葉・・・今回もそっくりそのまま返してやるぜ!風の傷っ!」
ゴゴ―――ッッ
神「貴様の攻撃は効かぬというのがまだ分からぬかっ!」
カカッ
神久朝は鏡を胸の前に差し出し、余裕で跳ね返した。
ゴゴ―――ッッ
犬「跳ね返した途端に隙だらけになりやがってっ!」
この前と同じ様に煙からじゅばっと出てくる犬夜叉だが・・・
神「ふっ。」
さっと鏡を上に上げ、犬夜叉を思い切り吹っ飛ばした。
犬「なっ・・・!?(心:何だ?この前よりはるかに威力が増してっ・・・)」
何が何だか分からず呆気に取られている犬夜叉に向け、神久朝が何か呪文を唱え始めた。
そして次の瞬間!
キ―――ン・・・
犬夜叉の視界は真っ白になり、突如耳鳴りが襲い始めた。
そして異臭が漂い始めた。
犬「な、何だ・・・?」
くんくんと鼻を嗅がせ神久朝の位置をつかもうとするが、異臭のせいか全く位置がつかめない。
犬「ちっ、この霧邪魔くせぇ!風の傷っっっ!!!」
鉄砕牙を振ってみるが・・・
犬「風の傷が出ねぇ!?一体何だってんだ!この霧はよ!!」
むしゃくしゃして鉄砕牙を振り回してみた。
すると―――
か「犬夜叉~!」
犬「かごめ・・・!?」
犬夜叉の目に映ったのは手を振りながら自分を呼ぶかごめ。
犬「っ!お前何でこんなとこ居んだ!!神久朝が居んだぞ!?」
がしっと肩を掴み尋ねてみるが、かごめは笑顔のまま黙っている。
不思議に思ってもう一度彼女の名を呼んでみる。
犬「かごめ?」
か「ねぇ、犬夜叉。私桔梗みたいに矢巧くなりたいなぁ・・・。」
犬「??」
予想外の答えに戸惑いを隠せない犬夜叉。
か「犬夜叉ぁ・・・的になってくれない?」
犬「な!?」
か「嫌だなんて言わないでね?言ったって無駄だけど・・・。」
矢を抜き、弓を構えるかごめ。
犬「おい、かごめ!?どうしたんだよ!?」
か「だぁーい好きな犬夜叉・・・地獄に・・・送ってあげる!!」
ばしゅっ
かごめは矢を放った。
犬夜叉目掛けて。
矢は確実に犬夜叉を狙っている。
犬「また・・・封印されるのか・・・?」
犬夜叉はふっと笑い、立ち尽くした。
かごめの放った矢を受け入れるつもりなのだろうか。
犬「・・・奈落の野郎もこった事しやがって。」
またふっと笑った。
しかしさっきの笑いとはまるでうってつけた様に違う。
犬「俺はもう・・・二度とこんな罠にははまらないって決めたんだよ!」
鉄砕牙を構える。
犬「風の傷ーっ!!」
思い切り飛び上がり、精一杯の力で空を斬った。
ゴゴ―――ッッ
出ないと思っていた風の傷も出るようになり、霧が晴れた。
耳鳴りも無くなり、かごめも消えた。
犬「へっ、やっぱりな。こんなとこだろうと思ってたんだ。」
神「ふっ・・・貴様ならこのような術位あっという間に見抜くと思ったが・・・思っていたより遅かったな。」
声が聞こえたかと思うと、すぅーっと神久朝は姿を現した。
犬「馬鹿かてめぇ。ちっとお前の遊びにのってやっただけでぃ!」
神「ふん。減らず口もいいとこだな。」
犬「覚悟しやがれ!今度こそぶった斬ってやらぁ!!」
神「もう貴様の力では我を倒せんという事がまだ解らぬ様だな・・・。」
まだまだ余裕の神久朝。
犬「(心:さぁ、どうするか・・・。むやみに風の傷を出しゃ簡単に跳ね返されちまう・・・。)」
神「どうした?我を倒すのではなかったのか?」
犬「うるせぇ!!お望み通り殺してやるよ!!風の・・・」
鉄砕牙を風の傷が取り巻く。
そして振り下ろそうとしたその時―――!
どすっ
犬「き・・・ず・・・!?」
鈍い音が後ろから聞こえ、背に激痛が走る。
か「ふふっ。犬夜叉さぁ、何か勘違いしてない?」
声と共に茂みから出てきた少女。
それは紛れもなくかごめの姿だった。
犬「かごめ・・・?また偽物か・・・?」
か「だーかーらっ!『また』じゃないの。さっきの私も今の私もぜぇーんぶ本物のかっごっめっ!分かった?」
犬「馬鹿やろっ・・・そんなの信じれる訳・・・」
うっと倒れ込む犬夜叉。相当背の傷が痛むのか。
神「命は取り留めた様だな・・・流石半分妖怪なだけはある。人間よりもしぶとい。」
犬「神久朝・・・」
神「この娘が偽物だと思うのなら今一度風の傷を出してみるが良い。我は手を出さぬ。」
すっと上昇し、怪しい笑みを浮かべる。
犬「っ!んな事・・・」
か「出来ないよね、犬夜叉は。私の事好きだもんね。あ、それとも出来るかな?犬夜叉は桔梗が好きなんだもんね。」
犬「かごめっ・・・。(心:神久朝のあの口調・・・まるでかごめが本物みてぇな言い草じゃねぇか。裏で糸引いてんのは奈落だし本物に手を出すっつー事も有り得ねぇ話じゃねぇ。畜生!どうしたら言いってんだ!!)」
か「犬夜叉・・・やんないの?風の傷。早くやっちゃわないと私が先やっちゃうよ?」
キリキリ・・・
ターゲットを犬夜叉に定め、弓を引いた。
犬「・・・。(心:どうすればっ・・・!一体どうすりゃ良いんだよ!!)」
か「今度こそほんとにさよならだよ、犬夜叉。」
にこっと微笑むかごめ。
か「ばいばい。」
バシュッ
また矢は放たれた。
犬「くそっ・・・。」
既に一発受けた犬夜叉にはもう立ち上がる力が無かった。
気力で生きてるだけなのだ。
犬「(心:やっぱり・・・俺はこうやって死ぬのかな・・・。)」
もう諦めかけた次の瞬間。
ヒュン
犬「っ!?」
後ろから放たれたらしき矢が通り過ぎた。
カカッ
神「!?」
か「な、何・・・?」
その場に居た者、皆固まった。
此処に居るのは犬夜叉、かごめ、そして神久朝の3人。
其の中で弓矢を扱えるのはかごめだけ。
しかしかごめの放った矢に対抗する矢が飛んで来た。
―――一体誰が?―――
ガサッ
謎が明らかになった。
―――矢を放ったのは桔梗だったのだ。
犬「き、桔梗・・・?」
桔梗「犬夜叉・・・。」
互い見つめ合う。
犬「何でお前が此処に・・・?」
桔「邪悪な妖気の気配がした・・・だから来てみた。」
そう言いながらちらっと横目でかごめと神久朝を見た。
桔「正体はかごめの隣の妖怪・・・か。」
神「・・・。」
桔「否、妖怪ではないな。貴様・・・半妖か。」
半妖という言葉に怯えるように肩を震わす神久朝。
神「っ!?貴様!!」
犬「やっぱりな・・・そうだと思ってたんだ。」
変化の解けた鉄砕牙を杖にしながらよろっと立ち上がる。
犬「てめぇの体中から神久夜の臭いと・・・人間の臭いがしてやがった!!」
神「ええい!それ以上言うな!!」
犬「っせぇよ・・・あれだけ半妖嫌ってた野郎が半妖でしたってか?ふざけんじゃねぇ!」
神「黙れと言うとろう!!」
ばっと手を上げ、かごめに指示した。
そしてかごめは其れに忠実に従い、矢先を犬夜叉に向ける。
桔「・・・かごめの額に四魂の欠片が埋め込まれてある。其れを取り除けば大人しくなるだろう。」
犬「何っ!?四魂の欠片だと!?」
桔「あと・・・・あの半妖の鏡にも1つ埋め込まれている。」
犬「なっ!?・・・やけに鏡の威力が倍増してると思ったんだ。そういう訳だったんだな!」
ふっと笑い、鉄砕牙が変化する。
犬「桔梗、神久朝の鏡の方、何とかできるか?」
桔「私にかごめを助けろと言いたいのか?」
犬「っ!?桔梗!?」
桔「・・・鏡だけだぞ。」
犬「桔梗・・・すまねぇな。」
桔「仕方ないだろ・・・。」
神「何ぶつぶつと話しておるのだ!来ぬのなら此方から行くぞ!」
いらいらした神久朝はそう叫び、呪文を唱えた。
神「はっ!」
すると、突然鏡の中から無数の職種が伸びてきた。
犬「へっ。んなもん俺に効くか!風の傷!!」
ゴゴ―――ッ
神「最早其の技は通用せんというのが分からんのか!」
スッ
鏡を風の傷の軌道に合わせようとした其の時―――
カカッ
神「っ!?」
桔「・・・。」
桔梗の矢が鏡に直撃。
しかも四魂の欠片が埋め込まれてある所。
欠片は頑張って矢を跳ね返そうとするが、桔梗の霊力には劣ろっていた。
神「くっ・・・鏡が・・・割れっ・・・」
パリンッ
神「あ・・・」
割れた。神久朝の鏡が割れた。
もう風の傷を防ぐ術も無い。
だが風の傷は真っ直ぐ神久朝目掛けている。
犬「(心:当たる!!)」
神「神久夜・・・貴様が破れた相手に我は敵わぬと云う事か・・・!!うっ、あぁぁぁぁぁ!!!!!」
叫び狂う神久朝の声と共に姿形は消え失せた。
犬「終わった・・・か・・・?」
か「まだに決まってんじゃない。」
はっと後ろを振り向く犬夜叉の目にはかごめが映っていた。
犬「かごめ・・・。」
桔「犬夜叉・・・かごめを助けるのは己でする事だな。私は力を貸さぬ。」
犬「桔梗・・・。」
桔「もう一度言っておく。四魂の欠片は額の中だ。」
そう言い残し、桔梗は去っていった。
犬夜叉が止める間もなく。
か「あーら。頼みの桔梗にも見捨てられちゃったね。どーすんの?犬夜叉。此処には私とあんた2人きり。あんたは私を傷付けられない。だけど私はあんたを傷付けられる。・・・逃げるっていう道もあるだけど・・・逃げたら私死ぬからね?さぁ、どーすんの?」
くすくす笑いながらかごめは犬夜叉に問う。
犬「かごめ・・・。俺が・・・お前を残して逃げる訳ねぇだろっっ!!!」
犬夜叉は鉄砕牙を投げ捨てる。
そして最大の気力を振り絞り、かごめに近づいた。
か「ふーん・・・じゃあ死ぬのね?分かったわ。覚悟しなさい。」
きりっと弓を構える。
犬「俺は・・・死にもしない・・・。」
か「往生際悪いはね。私が矢を離せばあんた死ぬのよ?」
犬「んな事・・・させっかよ!散魂鉄爪!!」
ばきっ
犬夜叉は素早く動き、弓を真っ二つに引き裂いた。
犬「うっ・・・。」
だが、それは犬夜叉にとっても大きなダメージを与えた。
か「・・・私の弓に何してくれんのよ。」
犬「か・・・ごめ・・・。」
か「・・・ばっかじゃないの?弓がなけりゃ矢は使えないって訳じゃないのよ?」
すっと犬夜叉に近づくかごめ。
か「こういう使い方も・・・」
矢を片手に持ち、ふっと振り上げる。
か「あるのよっ!!」
犬夜叉目掛けて一気に振り下ろす。
―――が
犬「っ!!・・・かごめ?」
か「う・・・止め・・・ろ・・・大人しくしろぉぉぉ!!!」
かごめは矢を捨て、頭を抱えながら叫び狂った。
犬「っ!?(心:もしかして・・・まだかごめの心は残ってるのか!?)」
か「くそぉぉぉ!!」
ばっと立ち上がる犬夜叉。
犬「かごめ!!」
そしてかごめを優しく抱き、強引にキスをした。
か「ぅ・・・」
最初は抵抗していたかごめだが、徐々に大人しくなっていった。
犬「(心:お願いだから元に戻ってくれ!!かごめっ・・・!!)」
か「・・・。」
ゆっくりと2人は口を離した。
犬「かごめ・・・。」
見つめ合う2人。
か「犬・・・夜・・・叉・・・。」
キーン・・・
かごめの額にあった四魂の欠片がぽろりと零れ落ちた。
ばさりと倒れるかごめを犬夜叉がそっと包み込む。
犬「・・・四魂の欠片・・・これでかごめは解放されたんだな・・・。」
安心したのか力を使い果たしたのか、犬夜叉もそっと瞳を閉じた。

―――叉・・・犬夜叉っ!―――
犬「ん・・・。」
七「お、犬夜叉!気付いたんじゃな!!弥勒ぅ!犬夜叉が起きたぞぉーっ!!」
犬「七・・・宝・・・・・・?・・・っ!!かごめ!かごめは何処だ!?」
ばっと身体を起こす犬夜叉。
七「犬夜叉!まだ動いてはならん!!体がまだ完全に治っとらんとゆうに!!」
犬「俺の体なんぞ如何でも良い!!それよりかごめは!?生きてんだろーなっ!?」
七「や、やめっ・・・ぐるじい・・・」
犬夜叉が七宝の襟首を掴み、七宝が気絶しかけた時、向こうの部屋から弥勒がやって来た。
弥「落ち着きなさい、犬夜叉。かごめ様は無事です。お前より先に目を覚まし、今は夕食を食べていますよ。」
犬「かごめ・・・無事だったのか・・・。」
ほっとしてまたどさっと布団の上に寝転がる。
弥「何があったのです?」
犬「・・・関係ねぇだろ。」
弥「はぁ。もう良いですよ。後でかごめ様に聞きますから。」
犬「・・・勝手にしな。」
そう言い、犬夜叉はまた眠りについた。

か「犬夜叉・・・。」
犬「ぅ・・・。」
再び犬夜叉が目を開けると、其処には愛しき女・かごめの姿が在った。
犬「かごめ・・・?」
か「犬夜叉・・・・・・ごめん・・・ごめんね犬夜叉・・・。」
目に一杯涙を溜めている少女の肩をそっと抱く。
犬「気にすんじゃねぇ・・・あれはお前じゃねぇんだ・・・。奈落と神久朝の仕業なんだから・・・絶対気にすんじゃねぇぞ・・・。」
呪文の如く同じ言葉を繰り返す犬夜叉。
それにこくっと答え、かごめは俯いた。
犬「・・・体は大丈夫なのか?」
か「うん・・・。犬夜叉は・・・?」
犬「俺はへっちゃらでい。こんな傷大した事ねぇよ。」
か「そっか・・・。」
犬「明日此処を出発するぞ。良いな?」
か「・・・うん。」
話に行き詰る。
犬「かごめ・・・。」
か「犬夜叉・・・。」
互いに見つめ合い、どちらからともなく唇を重ねた。
―――長い、長い、長いキスを―――



                       ~END~
             
               
★☆★☆コメント★☆★☆

・・・ふぅ。すっげ長いね!!(爆
これずぅーーーっと前ヵらやってた作品です。
部活中に頑張って頑張って・・・ねvv(ぇ
そんでやっと仕上がりました!!ぃぇぃv(死
なんヵ最後の方無理矢理って感じしますヶど気にせんとw(待
何気お気に入りだったりします♪(笑
んでゎぁ☆


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